第9回 ソノサポートセミナー Quest for UST ~症例検討会~
CASE-3 胆石嵌頓による急性(気腫性)胆のう炎
及び 胆のう腫瘍(悪性疑い)
( PDFはこちらから。印刷向きです ⇒ CASE3(回答・解説) )
F・・・受講者「超音波所見」
I・・・受講者「疑わしい疾患名・鑑別疾患名・治療への付加価値情報」
Q・・・受講者「講師に聞いてみたい事」
A・・・担当講師からの解説
1)F:(初心者です)胆のう拡張。内部にAS伴う結石(+)。充実性腫瘤を認める。
肝内胆管の拡張は認めない。一部壁肥厚。
I:(記載なし)
Q:門脈・総胆管の描出について教えてもらいたいです。(呼吸や走査)
A:文章での解説は難しいので実技の受講をおすすめ致します。
上記を踏まえた上で可能な限り解説したいと思います。通常肝内に見える血管は肝静脈と
門脈になりますが(通常、肝動脈は見えません)、血管の走行で鑑別は可能と思います。
わからない場合は、門脈には白い縁取り(グリッソン鞘)が見られますので鑑別のヒントに
してください。
肝内の門脈を肝門部方向に追跡すると門脈本幹に連続します。一般的にはその門脈の前面
に総胆管が見られることになります。ただし、門脈の前面には肝動脈も見えますので間違
わないように気をつけてください。カラードプラにて血流の有無を確認しても良いと思い
ます。
一番確実なのは、ミッキーマウスサインを確認することです。
左右の肝内門脈の合流部を短軸で描出し、少しSMV(上腸間膜静脈)方向にスライドさせ
た位置で門脈の画面左上に見えるのが総胆管になります。右上には肝動脈が見えます
(ミッキーマウスサイン) 総胆管(黒丸) 動脈(白丸)
門脈(灰色丸)
呼吸は画面を見ながら最もよく見える場所で止めるように指示してください
※本ホームページでは図が表示できません。PDF版では解説図もあります。
( PDFはこちらから。⇒ CASE3(回答・解説) )
2)F:胆のう腫大。胆石(+)。デブリエコー(+)。胆のう周囲に液体貯留像(+)
壁がはっきりしない?壁外への浸潤のような像はないので胆のう炎?
Ca,も疑わしい。
I:急性胆のう炎。胆のうCa,
Q:胆泥と腫ようの違い
A:胆泥は一般的に重力方向に見られ、体位変換で異動します。また血流シグナルもありま
せん。腫瘍は移動しません。カラードプラにて血流シグナルが見られれば腫瘍を積極的
に疑う所見になります。
注意点としてはカラードプラでアーチファクトを血流と間違わないことと、粘稠度の高
い胆泥は体位変換で移動が確認しにくい場合がありますので気をつけてください。
ちなみにdebrisはデブリスではなくデブリと読みます
3)F:胆のう内緊満。等エコー~高エコー散在。明らかなCBDの拡張認めず。
胆のう壁の肥厚は認めず。胆石。胆泥。
I:胆石(頚部かんとん)
4)F:胆嚢腫大。壁肥厚。
I:胆嚢炎
5)F:(初心者です)胆のう内デブリス? 胆のう壁肥厚
I:(記載なし)
6)F:(初心者です)胆石あり。胆でいあり。胆のうが大きくなっている。
胆のう壁の肥厚がある? コレステロールポリープがある?
I:胆のう炎。胆石症。
7)F:(初心者です)胆のう壁肥厚。結石。胆泥。ポリープ?
壁内に小さなスポットエコー。
I:胆石胆のう炎。胆のう腺筋(腫)症。胆のうポリープ。
8)F:胆石。胆のう腫瘤。
I:(記載なし)
9)F:胆石。胆泥。胆のう腫大(+)。緊満感(+)。CBD拡張(-)。可視域stone(-)。
sonelucentlare(sonolucent layer)(+)壁肥厚?
I:胆のう炎(再発)susp,
10)F:胆のう腫大。胆石(+)。胆のう内に低エコー構造物(sludge?)。肝内気腫?
CBD拡張(-)。
I:急性胆のう炎。 R/O胆のうが癌。
11)F:胆のう内部にdebrisとstone充満あり。胆のう周囲に液体貯留あり。
I:急性胆のう炎
12)F:内部不均一。結石。
I:(記載なし)
13)F:(初心者です)腎周囲に高エコー。内部。
I:右腎盂腎炎。
14)F:(初心者です)(記載なし)
I:胆石症
Q:総胆管の拡張があるのかないのか?かいぼうが?
A:今回の症例は肋間走査から総胆管を提示しました。
以前より総胆管は7-11(セブンイレブン)ルールがありますが、今回は7mm以下で拡張は
認めませんでした。拡張の有無は見慣れるとすぐに判別できますので、見慣れるまでは毎回
計測しても良いと思います(私は拡張があると思ったときのみ計測しています)
※総胆管の解剖(描出)については、上に記載していますので、参考にされてください。
15)F:胆のう緊満感あり。胆のう内部にdebri,stone。胆のう壁はびまん性に肥厚している。
もしくは不整に肥厚? CBDの明らかな拡張はなさそう。
I:胆のう腺筋腫症。黄色胆のう~(黄色肉芽腫性胆嚢炎)。
16)F:胆のう腫大。胆石。胆のう内腫瘍が充満している。総胆管は拡張していない。
I:胆のう腫瘍。
17)F:GB stone. 腫大(GB)。緊満化(+)。周囲高エコーarea(+)。炎症波及(穿孔susp,)。
debris. CBD dilatation.
I:(記載なし)
18)F:腸管の壁肥厚あり? 総胆管の拡張。 結石。
I:(記載なし)
19)F:胆嚢腫大? 結石。 デブリ。
I:慢性胆嚢炎
20)F:低エコーmass内に音響陰影を伴う高エコー域。
I:(記載なし)
21)F:胆嚢腫大。胆石。胆のう壁肥厚(3層構造)。一部不整肥厚(Ca,?)。
Debris. 胆のう周囲高エコー(脂肪織集積)。胆のう周囲Fluid(+)。
I:急性胆のう炎
22)F:胆のう腫大を認めます。充実性部分を認め、石灰化を有します。また、stoneを多数認め、
I:胆のう捻転 susp, R/O急性胆のう炎 R/O胆のう癌
23)F:GB腫大。緊満(+)。GB stone(+).debris(+).内腔にガス像(+)。
肝との境界不明瞭(一部)。 CBD dilatation(-)。
I:壊疽性胆嚢炎 suspect
24)F:胆のう腫大し緊満感あり。内部に結石(+)。デブリ(+)。びまん性に隆起性の腫瘤あり。
胆のう壁肥厚。肝への浸潤は認め無い。
I:胆のう腫瘍。胆のう炎。胆のう結石。
25)F:胆のう腫大あり。Soonolucent layer(+)。緊満感あり。内部に胆石、胆泥、胆砂あり。
CBD拡張なし。周囲脂肪織集積あり。周囲に少量のFluid 貯留あり。
胆のう管付近にstoneあり。(かんとん?)
I:胆のう炎 susp,
26)F:胆のうが腫大し、胆のう壁も肥厚しています。壁内に高輝度点状エコーを多数認めます。
壁は一部不明瞭です。胆のう内には胆石を認めます。
I:胆のうがん。胆のう炎
27)F:腫瘤性病変あり(漿膜面より10㎜大)。スラッヂ。CBD拡張(-)。軽度漿膜下edema。気腫。
I:気腫性胆嚢炎 GB Ca,
主例)F:胆のうは腫大し緊満感あり。頚部に結石を認め、急性胆のう炎を疑う。胆のう壁は軽度
肥厚し、内腔に多量のデブリスを認める。また、多数の点状高エコーを認める。
I:結石かんとんによる急性胆のう炎 R/O 黄色肉芽腫性胆のう炎
※:運営中にて症例スライドや解説スライドは余り見られなかったので、あくまで参考程度で。
間違っているかもしれません(汗)。
※:解説にて内腔の点状高エコーはAirであるとの事。通常Airは重力と反対方向の高い位置
にあつまり、磁器様胆のうや胆石充満と類似した像をとるが、本症例は粘度の高いdebris
により、点状高エコーとなったのではとの事。CT像でもAirであり、細菌培養でガス産生
菌が検出された。また、解説にて胆のう腫瘍(癌疑い。SS癌?)の合併もあった。
所見の書き方、英語の使い方、表現など、正しくは超音波専門医或いは、放射線医にご指導を
仰ぐことがベストです。身近にいない場合は、超音波専門医の指導を受け、定期的に学会に参加
してアップデートしている超音波検査士(技師)に相談されるのがベターです。
相談を受けた検査士は、自分で自信が持てない(経験外や十分なコンセンサスが無い)内容の
時は、きっと専門医やベテラン医師に相談してあなたに回答してくれると思います。
最も重要な事は、オーダーした依頼医が何を求めているのか、どんな報告を望んでいるかで
あり、十分なコミュニケーションと信頼関係の構築が大切です。
今回、診療放射線技師の方々に多数ご参加いただきました。心より御礼申し上げます。また、
記載のない方が多い中で、RTの方々は多数コメントを書かれており、大変ありがたかったです。
意味はほぼ同じなのですが、今後のため、超音波用語ついて説明させていただきます。
※LDAは超音波では、低エコー域或いは低エコーSOLなどと用います。
※周囲脂肪織の集積は超音波では周囲脂肪織の輝度上昇(isolation sign)などと用います。